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特別連載スタート!北尾亘のコラム

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北尾亘が、言葉を紡ぐ!

圧倒的な身体能力で、舞台上で観客の目をひきつける北尾亘。
雄弁な身体からは、どのような言葉が紡がれるのでしょうか?
つくりての日々の発見・考え・作品の裏側などなど、北尾の素直な言葉を月1回の連載にて、お届けします。
舞台上とはまた違った魅力をお楽しみください!

第1回 コラムヴァージン

こんにちは。
初めましての方は初めまして。ダンスカンパニー【Baobab】主宰、北尾亘です。

昨年度よりご縁があってサポートアーティストとして活動させていただいている、急な坂スタジオさん。まだまだ新参者ながら、創作やダンスにまつわるワークに留まらず、様々な発想の源として日々お世話になっている場所です。

この度、ディレクターの加藤弓奈さんから「コラム連載」のご提案をいただきました。日頃なかなか文字として言葉を発信する機会の少ないダンス界隈に身をおくので、妙な緊張とワクワクの中でこの言葉を綴っております。

「妄想セルフインタビューとしてみようか?」
「これといった趣味も無いからダンスや舞台のことに偏りそうだな。」
「きっとたくさん校正が入るだろうな、」
「いっそ呑みながら綴ろうか?」

色んな雑念は吹き飛ばし、まずはフラットに、第一回をスタートしてみようと思います。

■春先のファッションについて
ようやく過ごしやすくなった5月。気温も上がり重たいアウターを脱ぎ捨ててカラダも軽くなったような感覚。寒いのは苦手でどちらかと比較する前に「暑いの大好き、夏好き」を公言する身としては、この季節も悪くないなと。
先日とある友人と昨今のスニーカーブームの話をしていて、「最近は高いヒール履く人が減った」と言っていた。そういえば街中でとんでもない歩き方をする人を頻繁には見かけなくなったなと気付く。
そういう人と出会うと本気でダメ出しメモを書きたくなる。稽古場でもたまに真似てみたりもする。これはあくまでそういう人々を心底心配していると同時に、勝手にカラダの歪みや転倒を案じ過ぎてすり減った神経のためのガス抜きと捉えている。(とても身勝手な話ですが、、)

アパレルの世界には季節感とかあるのだろうか?
例年、新年を迎えてから少しすると店先のマネキンが、キツめの暖房の中で薄手の春物を纏いはじめている。毎年その光景を前に「季節感が歪むなぁ」と眺めているのだけど、その仕掛人(デザイナーやクリエイター)達について妄想すると、、、
「満腹状態で晩ご飯の献立を必死に考えている感覚では?」とか「夜勤明けのこの時間は昨日の延長と呼ぶべきか、周りに従い今日と呼ぶべきか?」とかとか。
自分ならパニックを起こしそうだなぁ、と。
(この話はあまり伝わらないような気がしています。)

せっかくなので感覚の妄想をサーフィンすると、、、

■年と年度について
年々増す感覚なのですが、1月から3月の間が宙ぶらりんな感覚があります。
(これはよく共感してもらえる話なので丁寧語にて。)
一般社会とはちょっと違った時間軸で活動する身だからこそな気はしますが…『盛大に年をまたいで、一年の物理的な清算を必死にこなしながら暖かい春に目掛けて進む。』というのが“一年のスタート”というのがどうも感覚としてしっくりときません。
ちょっとレイヤーが重なり過ぎていると思いませんか?そうでもないのでしょうか。
加えて2月は横浜を中心にダンスが盛り上がりの頂点を迎えるため、地に足が着いていないような感覚すらあります。

ですので最近では、「空白の3ヶ月」と呼んでみています。

なんの話なんでしょう。
最初で最後の『コラムヴァージン』ですので、大目に見てやってください。

そんな想いと妄想の中、今年の「1月から3月辺り」を個人的に振り返って締めくくりたいと思います。

連載コラム第一回目、今さらの本題です。

■『DANCE×Scrum!!!』とは何だったのか?
去る2016年3月。我がカンパニーBaobabが主催となり、池袋「あうるすぽっと」共催のもと催した若手ダンスフェスティバル。
「コンテンポラリーダンスをより身近に」
「若手クリエイターの作品発信の場・クリエイター同士の交流と刺激し合える関係づくりの新たな場」
「ダンス界の活性化」…

クリエイター・ダンサー・観客が、スクラムを組むかのごとく一斉に集い、さまざまな挑戦を掛け合わせた大規模な一大ダンスムーブメント。それが『DANCE×Scrum!!!』であった。

もともとジャズダンスやストリートダンスなどのエンターテイメント性の強いジャンルから足を踏み入れた私にとって、コンテンポラリーダンスは【難解・高尚・閉鎖的】というようなイメージを払拭出来ないと考えている。
この世界に身をおきながらも、未だそういった思いを抱く作品にも数々出会う。

ただその中で昨今の若手クリエイターからは、何かこれまでの印象を突き破ろうとする表現がくすぶり出しているように感じてもいる。それは自身のカンパニーでも貫こうとしている姿勢でもあった。

「どうだろう。ここらで一声上げてみては?」と、この指止まれ的に手を上げてみた。

性根は「お祭り好き」。演劇やパフォーミングアートが溢れるフェスティバルに多数参加させてもらった経験と、過去実施したパフォーマンスイベント『GOOD!!』の収穫を経て発案に至る。あうるすぽっとの劇場内を飛び出し、ホワイエ空間にも多様なダンス表現が散らばることで、ダンスの熱をより直に感じてもらえる環境づくりを押し進めた。

加えて実施に先駆けたインタビュー、乗越たかお氏(作家・ヤサぐれ舞踊評論家)による言葉に感化された点も、大きな目標となった。
インタビューリンク

「日本におけるフェスティバルは一過性のお祭り騒ぎの性質が強い。海外ではそこに集った者達の意見交換の場として重要な役割を持つ。」とのことだった。
ダンスの劇場離れ。カフェやギャラリー等での小規模なパフォーマンスへの移行が進むが、これはより情報もキャッチしづらくより閉鎖的な環境を生み出してしいるように感じる。才能あるクリエイターが埋没せぬよう集える場を持ち、価値観の討論や交流を生む。さらにはその場に立ち会った観客も含め、多数の表現の交差点で様々な議論や意見交換がされることを望んだ。

nekkyou
DANCE×Scrum!!! 撮影:金子愛帆

大志と思惑が混在した大規模な試みは、結果として大きな収穫となった。
各クリエイターの臨み方は本当に個性豊かで、それはそれぞれの作品世界の違いと同じくらいに刺激的なものであった。
作品の枠を飛び越えて企画に没入してくれた人。一心不乱に良き上演に漕ぎ着くため猪突猛進した人。周囲の出方を注視しながら隙間に鋭く表現を投げかけた人。
まずはそんな場が立ち上がったことを嬉しく感じる。これはただのお祭りの中では生まれぬ刺激の連鎖であったと感じる。

興味深かったのは、どこかで「みなまでさらけ出さぬコアな部分、或いは考え。」を全員が抱えていたように感じた点。
これはダンサー特有の“身体感覚”に関係しているように思う。 このダンス界隈では、見栄えや統制以上に「本人の身体感覚」を重用視するのが特徴。日頃集団作品を手掛ける自分であっても、他のダンサーや振付家とは共有し得ない『絶対領域的な身体感覚』が存在していると感じる。
交流を大きく打ち出す企画の中でも、その点までは晒さないヒリヒリした関係はダンスにおいて重要なのだろうと悟った。

あぁ日本人的。(自分に対しても)

観客にとってはどうだったのだろう。
フェスティバルの彩りとして、ドリンクの提供やDJプレイも加わった終演後のアフターパーティー空間は、およそ日本で他に類を見ない試みだった。
聞こえてきたご感想も豊かなものが多く、コンテンポラリーダンスに対する閉鎖的な印象は幾分変化したのではないかとも思う。
加えて若きダンサー達への賞賛の声も多く上がり、ダンスの未来に明るさを覚えていただけたなら感無量である。(願望も含めて)
いつまでもDJがプレイするフロアで踊り続けるダンサー達を、少し離れてずっと見届ける人達の姿が印象的だった。
その渦に入り込むでもなく、ただどこか名残惜しそうにお酒を口にし笑顔で見守る。
この時間と空間は唯一無二の場だと確信した。 そこに集い目撃した事実が、この先にも続いていって欲しいと願う。

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DANCE×Scrum!!! 撮影:bozzo

このフェスティバル最大の課題は、「継続」である。

第一回目に集ったクリエイター・ダンサー、そして願わくは観客が、その当事者として次の活動やダンスへのまなざしに繋がっていかなければ意味がない。
一過性のフェスティバルに留まらず、この機会を通してより遠くまでダンスが浸透していくよう働きかけたい。一つのプラットフォームとなれるよう。

きっとまた開催します。一度目を逃した方も、頭のどこかにこの事実を留めておいていただけたら幸いです。

*****
何だか浮ついた内容が増えた後半でしたが、「空白の3ヶ月」での出来事ですのでお許しを。
きっとこの連載コラムでは、また触れると思います。

北尾亘(Baobab)


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